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4点目として、夜間中学について質問いたします。
【道下】
1.公立夜間中学について
まず、公立中学校夜間学級、いわゆる公立夜間中学についてです。
戦争や貧困などで学齢期に義務教育を受けることができなかった中高年齢者や、「民族の言葉」や「日本語」さえも学ぶ機会を奪われた在日韓国・朝鮮人、中国残留孤児としての帰国者とその家族、不登校のまま卒業証書だけをもらってしまった人、就学を免除または猶予された障がい者など、学校で学ぶ機会を得られないまま学齢期を過ぎてしまった義務教育未修了者は、全国夜間中学校研究会が国勢調査などから推定して全国に100万人、道内では推定10万人以上いると報告しています。
そうした方々の中で、「学びたい」という意欲のある方々のために、公立の夜間中学が8都府県に35校開校され、多くの方が通学されています。
道内には公立の夜間中学はありませんが、自主夜間中学は、20年目を迎える札幌遠友塾、昨年開校した旭川遠友塾、そして今年に入り函館と釧路に開校されました。札幌遠友塾では新入生28名を含めて86名、旭川遠友塾は新入生が19名、2年生が23名。4月15日に開校した函館遠友塾には47名が入学、5月9日に開校した釧路の自主夜間中学「くるかい」には予想をはるかに超える51名が入学し、1部と2部に分けて授業をしていると聞いております。
平成19年第3回定例会において、わが会派の同僚議員が、自主夜間中学を運営する団体に対して、学校の教室など施設の提供や財政的支援など、教育行政の責務として夜間中学への取り組みを積極的に進めるべきと質問・指摘しましたが、道教委は公立夜間中学の設置は原則市町村が担うこと、必要な助言指導や働きかけは行うという、法律論を建前にして非常に消極的な内容の答弁に終始しましたし、その後の道教委の取り組みは見えません。
2年前に結成された「北海道に夜間中学をつくる会」は、道教委や札幌市に公立夜間中学の必要性を訴え続けています。
同僚議員の質問以降、道内では新たに自主夜間中学が3ヶ所開設され、生徒は200人を超えています。今後も自主夜間中学のニーズ、つまり学びたいという意欲を持つ方々はさらに増え、道内各地に自主夜間中学の開設が予想されます。
そこで、北海道におけるセンター校の役割を担う公立夜間中学を札幌市に開設すべきと考えますが、教育長の見解を伺います。
また、市町村が公立夜間中学を設置する場合、道から財政的支援などを実施すべきと考えますが、所見を伺います。
【教育長】
いわゆる公立夜間中学の設置についてでありますが、公立中学校夜間学級、いわゆる公立夜間中学の設置につきましては、法令により、設置者である市町村の権限により行うものとされており、全国的には、8都府県において35校の市、または区立の夜間中学が設置されているところ。
私といたしましては、学齢期にさまざまな事情や病気などの理由によりまして、義務教育未修了の方々がおられ、こうした方々の学ぶ機会が確保されることは、大切なことと受け止めており、今後とも、関係自治体から、教育内容や教員の配置など、公立夜間中学の設置にかかわる相談や問い合わせなどがあった場合は、適切に対応してまいる。
なお、そうした場合にあっても、設置や運営に係る経費については、既存の制度活用を含め、基本的には、市町村において措置すべきものと考えている。
【道下】
2.自主夜間中学について
次に、自主夜間中学についてです。
多くの自主夜間中学で、会場の確保や使用料負担に悩んでいるそうです。札幌遠友塾は昨年度まで、札幌市教育文化会館の会議室を借りていましたが、半額であっても年約55万円の使用料が収支を圧迫していました。しかし今年4月から、札幌市教育委員会などの支援により市立向陵中学校の教室を年約12万円で借りることができ、負担をある程度軽減できるとともに、「本当の学校」で入学式を行い、授業を受けることに皆さん大変喜んでおられます。
そこで、こうした札幌市教委の取り組みのように、自主夜間中学を運営する団体に、学校施設の提供や財政的支援を実施する市町村に対して、道が財政的支援などを実施すべきと考えますが、そのようなお考えがおありなのか、検討中なのか、伺います。
さらには、義務教育を受ける権利の保障と、生涯学習の促進という観点から、自主夜間中学を運営する団体に対して直接財政的支援を行ったり、遠距離から通学する生徒への交通費補助、現職教員の無償派遣や教員OBへのボランティア活動への働きかけなど、そういった支援施策を検討し、実施すべきと考えますが、教育長の見解を伺います。
【教育長】
自主的な学習活動についてでありますが、道内でいわゆる自主夜間中学として活動を行っている団体は、札幌市、旭川市、函館市、釧路市における4団体であり、それぞれ10代から80代までの幅広い年齢層を対象として、国語、数学、英語など自主的な学習活動が行われていると承知している。
道教委としては、これまでも地域の皆様の様々な学習ニーズに対応して、学校開放の促進や、民間教育事業者などと連携して、学習機会の提供等に努めるとともに、市町村に対して、学校施設等の有効活用などについて働きかけをしてきたところ。
今後とも、こうした取り組みにより、市町村等と十分に連携を図りながら、地域の皆様の自主的な学習活動が広がり、より多くの方々に学ぶ機会が適切に提供されるよう生涯学習の一層の振興に努めてまいる。
<再質問>
【道下】
次に、夜間中学について教育長に再質問いたします。
今日は「北海道に夜間中学をつくる会」の方々も傍聴にいらっしゃっています。
夜間中学に対するニーズは2年前から確実に高まっているにもかかわらず、教育長の答弁は、2年前と全く変わっていません。非常に残念です。
道教委は道内の自主夜間中学の抱える問題や行政に対するニーズを把握していますか?また各市町村教委などと夜間中学について連絡や情報の共有を図っていますか?
自主夜間中学について、道教委は市町村に対して、学校施設等の有効活用などについて働きかけをしてきたところと答弁されましたが、函館遠友塾が函館市教委に対して、小中学校の教室を一般団体に開放している「社会学級」という制度を遠友塾も利用可能か問い合わせたところ、函館市教委から不可能という返答を受けたそうです。道教委の取り組みが不十分であることを表しているといえます。
教育長は自主夜間中学を見学されたことはありますか?
職場では中学を卒業していないことを隠しながら働き、遠友塾に通って一生懸命勉強している方。戦後の混乱期で学校に通えず文字を書くことができなかったけれども、いまお孫さんにお手紙を書きたいという一心で、長い時間をかけて国語を勉強している方。
理由は様々ですが、皆さん本当に学ぶ意欲は強く、そして一生懸命勉強されています。
そして、生徒さんたちのために無償で勉強を教えるスタッフ、会の運営に携わるスタッフも一生懸命頑張っています。これまでは中高年齢者が多かったのですが、最近では不登校や引きこもりで中学に通わなかった方々が夜間中学に通うケースが増えてきているそうです。
そういった方々の姿を見ると、教育長も、道教委のトップとして、一人の人間として、何かやらなければという想いがきっと湧き立つと思います。
現在、北海道に夜間中学をつくる会などが、ひとつには北海道におけるセンター校の役割を担う公立夜間中学(公立中学校夜間学級)を札幌市に設置すること、二つ目には道内の自主夜間中学を運営する民間団体に対して、学校の教室使用を主とした施設の提供と財政的支援を行うこと、を道教委に対して請願する予定で、そのための署名活動を実施されています。
道教委として、その請願を受けた場合は、速やかな対応と要請事項の実現に向けた取り組みをぜひ行うよう指摘いたします。
道教委は、道内における義務教育未修了者の数や、夜間中学で勉強したいと意欲のある方がどれくらいいるのか、また自主夜間中学はどのような課題を抱え、行政に対してどんなニーズがあるかなど、アンケート調査などを行って現状を把握すべきと考えますが、教育長の見解を伺います。
【教育長】
義務教育未修了者の把握などについてでありますが、いわゆる公立夜間中学については、権限を持つとされている市町村が判断すべきことと考えているが、調査の実施については、プライバシーに関わることであり、非常にデリケートな情報でもあることから、なかなか難しいものがあると考えている。
以上